深夜1時。3分の商品紹介動画の前で、私は固まっていた。ナレーションは7テイク目。自分の声は風邪を3日ひいたみたいにガラガラで、聴き返すたびに心が削られる。
「TTSずっと触ってる人だよね?なんでそこで根性で録ってるの」
友人にそう言われて、ぐうの音も出なかった。無料TTSを日常的にいじっている人間が、なぜマイクの前で気合いを入れていたのか。……正論すぎる。
その晩、溜めていた2つの案件をまとめて作り直した。YouTubeショート用のナレーションと、3か月ずっと後回しにしていたPodcastのオープニングだ。同じ「声を作る」作業なのに、詰まるポイントがまるで違う。
動画ナレーションで大事なのは、声の良さより「直せること」
ショート動画のナレーションは、とにかく修正が発生する。クライアントが今日は「トーンが硬い」、明日は「テンポが遅い」、明後日は脚本ごと差し替え。毎回マイクの前に座っていたら、喉が先に壊れる。
ここでテキスト読み上げを無料で使えるありがたさが出る。脚本の直した箇所だけテキストを差し替えて、もう一度生成すれば30秒で新しい音声が出てくる。話す速さも間の取り方もこっちで調整できる。マイクの前で「もう一回」を繰り返すより、圧倒的に楽だ。
私のやり方はこう。以前録った中で一番きれいだった音声を声をクローンするページにアップロードする。静かな部屋、マイクから拳ひとつ分、2分くらいの原稿読み。それで作った声をナレーションに使う。声質が統一されるから、視聴者は合成だと気づかない。
ひとつだけ注意。ナレーション原稿に「(笑)」や「えー」みたいな言葉は書かないほうがいい。合成すると不自然に浮く。表情や笑いは映像とBGMに任せて、文字は情報を伝えることに集中させる。
Podcastのオープニングは「人間味」が正解で、別の難しさがある
Podcastはまったく違う。リスナーはイヤホンで聴いていて、最初の15秒で離脱するかどうかを決める。合成っぽさが少しでも出ると、すぐスキップされる。「これ、AIが読んでるだけじゃん」と思われたら終わりだ。
だから私の場合、オープニングの固定パートだけクローン音声にしている。番組名、自己紹介、今日のテーマ。本編の雑談は自分で録る。こうすると冒頭は音質が安定して、テンポもきれい。本編には生の呼吸や言い間違いが残る。……言い間違いって、けっこう親しみになるんだよね。
この用途だと、学習させる素材の質がさらに効いてくる。最初は電流ノイズの混じった録音を使ったら、歯擦音がシュワシュワして鳥肌が立った。素材を差し替えたら一発で直った。登録不要の音声合成なら試し直しのコストがゼロなので、納得いかなければ別の音声を上げればいい。
動画は効率と差し替えやすさ、Podcastは信頼感。同じオンラインで音声クローンを使っていても、合格ラインが全然違う。
私の実際のワークフロー
毎週だいたいこの流れで回している。
- 脚本を書いたら一度音読して、書き言葉を全部削る(「なお」「以上のことから」は消す)
- ナレーションはクローン音声で一括生成して、タイムラインに合わせて切る
- Podcastのオープニングは別で生成。話す速さをナレーションより少し遅く、声を少し軽く
- 書き出し前にイヤホンで通しで聴く。スマホのスピーカーだと誤魔化せるノイズが、イヤホンだと全部出る
同じ声をオーディオブックの音声作成に回すこともある。章ごとにファイルを分けて生成すれば、自分で読み直す手間が消える。動画ナレーションAIとして使うか、朗読として使うかで、間の取り方は変えている。
あと、量産している人向けに。VoxCloneは多言語の音声合成を無料で扱えるページもあって、英語や中国語のナレーションを混ぜたい案件でも助かっている。吹き替えAIを無料で試したいときも、まずここで声を作ってから検討すればいい。
FAQ
自分の声をクローンしたら、合成だとバレる?
素材がクリーンなら、日常的な動画ではまず気づかれない。ただPodcastみたいに近距離で聴かれる場面は、固定パートだけ合成、即興は生声、という混ぜ方がおすすめ。
動画ナレーションにAI音声を使うと、プラットフォームで問題になる?
主要なプラットフォームはAI音声そのものを一律で禁止していない。大事なのは中身に価値があるかどうか。私は概要欄に一言書くか、自然に使うようにしている。他人の声を無断でクローンするのは、もちろんNG。
無料でどこまで使える?急に有料化しない?
自分の用途では数か月使っているけど、無料の音声クローンの範囲は変わっていない。登録なしでそのまま使える。とはいえ無料サービスが10年後も同じとは限らないから、大事な音声素材と学習に使った原音は手元に残しておくといい。
で、結局どうだったか
あの夜の2時、動画ナレーションを生成し直して納品したら、翌日クライアントから何も言ってこなかった。クライアントの世界では、それで満点だ。Podcastのオープニングもその晩で録り終わった。3か月放置していたものが、1時間で片づいた。
もしナレーション録りで消耗しているなら、今夜10分だけ使ってみてほしい。静かな部屋で2分、自分の声を録って、AI音声を無料で試せるツールに放り込む。合わなければ消せばいい。お金はかからない。