満員電車で録った音声をクローンしたら、車内アナウンスまで混ざった話

「その声、電車の中にいるみたい」——母がそう言った瞬間、私は固まった。

先月のことだ。80ページの講義資料を音声にして、通勤中に聞こうと企んでいた。資料はPDFで、行間がびっしり詰まっている。10分眺めると目がしょぼしょぼしてくる。そこで思いついたのが、無料 音声クローンで自分の声を複製して「自分」に読ませるという作戦だった。親しみもあるし、耳も疲れないはず。ところが、最初にできあがった音声を聞いて、私はしばらく言葉を失った。

満員電車で録った3分12秒が、全部を台無しにした

素材は朝のラッシュ、山手線の中で録った3分12秒。当時は我ながら賢いと思っていた。通勤時間を無駄にせず、ついでに原稿を読めばいいじゃないか、と。スマホを口元に近づけ、イヤホンを片耳だけ外して、自分で書いた読書メモを読み上げた。

最初の一文はまあまあだった。二文目からおかしい。声が水中にいるみたいにこもって、語尾に低く唸るような音がまとわりつく——車両の走行音だ。そして四文目、「次は、新宿、新宿です」と割り込んできた。え、と思って巻き戻し、三回聞いた。間違いなかった。隣で流れていた車内アナウンスを、AIが私の声質の一部として学習していたのだ。

その日は一日中、自分に呆れていた。音声クローン オンラインのツールを使っただけなのに、なぜ車内アナウンス付きの声ができあがるのか。

大丈夫だと思っていた3つの勘違い

ノイズは「背景」ではなく「特徴」として拾われる。 これが一番痛い勘違いだった。クローンは人の声だけを抜き出してくれると思っていた。実際には音声全体の統計的な特徴を学ぶ。電車の低い唸り、周囲の話し声、スマホを口に近づけたときの破裂音——全部が「あなたの声はこういうものだ」としてモデルに書き込まれる。素材が汚ければ出力も汚い。例外はない。

声質より、長さと話す速さのほうが効く。 私の3分のうち、2分は周りを気にして声を潜めていた。しかも速さがバラバラ。短くて不安定なサンプルから、まともな声が生まれるはずがない。無料の音声クローンソフトでも有料のでも、素材の質という関門は平等に立ちはだかる。

スマホの通話ノイズキャンセリングは裏切る。 あれは「相手に聞き取らせる」ための機能で、人の声の倍音を削ってしまう。通話ならありがたい。クローンには最悪で、倍音が消えると声がペラッペラになる。

ここまで整理して、音声クローンのページで最初からやり直した。

録り直し:クローゼットと羽毛布団と、3分だけ

クローゼットに潜り込み、冬用のダウンを横に積んで吸音材の代わりにした。スマホは機内モード、口から20センチ、顔には付けない。読むのは自分で書いた、文の長さがバラバラの話し言葉。速さは普段よりほんの少しだけ遅く。

3分。たった3分だ。

できあがった声を聞いて、自分では気持ち悪かった。自分の録音を聞くのは誰だって気持ち悪い。でも横で母が「これ、あんたの声じゃん」と言った。よし、合格。

それからが本題である。資料を耳で聞ける形にする。無料 TTS での音声合成は、思っていたよりずっとハードルが低かった。

PDFをそのまま放り込めばいいわけではない。やったことはこうだ。ヘッダー、フッター、ページ番号、参考文献の肩注を全部削る。数式と表は別に切り出して、一文の説明に置き換える(「ここに3行2列の比較表があります。左が手法、右が精度です」)。大きな見出しの前には「第一節」と一言足して、耳の道しるべを作る。

整えたテキストをテキスト読み上げに入れて、さっきの自分の声を選んで、段落ごとに生成する。テキスト読み上げ 無料というのは最初は半信半疑だったけど、使ってみたら本当に課金されなかった。80ページが11ブロック、1ブロック7〜8分。ちょうど一駅分の距離だ。

自分の声が「ベイズ推定」と読み上げるのを聞いたときは、なかなか不思議な気分だった。要は無料の AI 音声を読み上げ機として使っているだけなのに、その読み手が自分なのである。

実際に手を動かして分かった細かい話:

  • 素材は「短くきれい」が勝ち。長くて騒がしい30分より、静かな3分。
  • 一度に長く生成しない。15分を超えるブロックは聞くのがしんどいし、途中で区切れない。
  • 数字と略語は先に書き換える。「2024」は「にせんにじゅうよん」、「CNN」は「シーエヌエヌ」。そのままだと変な読み方をする。
  • 生成前に10秒だけ試聴する。全部作ってから声を間違えたと気づくのは悲しい。

この流れが通ってから、アクセシビリティのボランティアをしている友人に実演してみた。彼らの現場はもっとシビアで、視覚に障害のある読者が聞くのは教材、論文、行政の資料。平気で100ページを超える。彼らにとっては、登録不要 音声合成で使えるかどうか、回数制限なくテキストを音声にできるかどうかのほうが、声が似ているかよりずっと重要だった。

最初は無料の音声合成APIを探して自分でスクリプトを書こうかと思った。でも結局、ブラウザで直接操作するほうが速くて、そのまま落ち着いた。VoxClone に関して個人的にありがたいのは登録が要らないところ。開いてすぐ使える。たまにしか使わない人間には、この気軽さが効く。無料の音声クローンと無料のテキスト読み上げが同じサイトにあるので、タブを行き来しなくて済む。自分の声を一度作ってしまえば、あとは何度でも呼び出せる読み上げエンジンになる。何ページ読ませても罪悪感がない。

サイトは永久無料の音声クローンをうたっている。私の場合、半年ほど使って突然課金を求められたことも、枠が尽きたこともない。ただ、細かい方針は公式サイトの説明が優先だ。

日本の制作現場だと、ここが少し違う

日本で声を扱うときは、「声優の声を無断でクローンする」という権利の話が常につきまとう。自分で自分の声をクローンする分には問題ないけれど、他人の声、ましてやプロの声を許可なく学習させるのは避けたい。プライバシーの観点でも、素材に第三者の会話が紛れ込んでいないかは一度チェックしたほうがいい。

それから、用途が広がるのが動画のナレーションだ。動画 ナレーション AI を使う案件も増えていて、YouTube の解説動画や研修用スライドに自分の声を当てる、という使い方がしやすい。吹き替え AI 無料のツールを探している人も、音声合成 無料のサービスを渡り歩く前に、まず自分の声を素材にしてみると失敗が少ない。オーディオブック 音声 作成も同じ流れでできる。自分で書いた原稿を、自分の声で、通勤中に聴き返すわけだ。多言語 音声合成 無料の機能を使えば、同じ原稿を別の言語で読み上げさせることもできるので、海外向けに短い紹介動画を作るときにも助かっている。

FAQ

クローンした声が自分に似ないときは?

十中八九、ツールではなく素材の問題だ。振り返って確認してほしいのは3つ。録音に他人の声が入っていないか、持続的な環境音が乗っていないか、話す速さが乱れていないか。もう一つ見落とされがちなのが感情で、熱のこもった文章を素材に使うと、できあがる声も高ぶったままになる。それを講義資料に使うと違和感が出る。素材は普段の口調で、演じずに録るのがコツだ。

資料の中の数式・図表・コードはどうする?

TTSに読ませるのは諦めたほうがいい。私のやり方は、口語の説明に変換して本文の該当位置に差し込む。数式なら「シグマ、iイコール1からn」、表なら「この表は3行で、1行目は……」、コードはまるごと飛ばして「ここにコードがあります。原文の何ページを見てください」とだけ読ませる。不格好だけど、耳はついてくる。

登録不要のオンラインツールに回数制限はある?

半年使った範囲では出会っていない。ただサイトの方針は変わりうるので、公式の説明を確認してほしい。私からの提案は、卵を一つの籠に盛らないこと。大事な長文は、生成が終わった時点で音声を端末に保存しておく。それが一番安定する。ちなみにこちらのチュートリアルにも長文を扱う考え方がまとまっているので、眺めてみる価値はある。

今夜、3分だけ録ってみては

手元に、見るだけで嫌になる長文があるなら——講義資料、論文、行政の通知、製品マニュアル——今夜にでも動ける。静かな狭い場所を見つけて、スマホで自分の声を3分録る。速さは少し落として、文は話し言葉で。それから無料音声クローンを開いてみる。

私の真似だけはしないでほしい。電車の中で録るのは、本当にやめたほうがいい。